「クビ」の種類

 

「クビ」と言われるのも実際にはいろいろです。一番多いのが「退職勧奨」です。「今月末で辞めてくれ」「今月売り上げが達成してない人はクビだ」などと言われて、「退職届」を書かされる、というものです。じつはこの退職勧奨には全く法的な拘束力はありません。

 次に「解雇」です。解雇とは使用者側から労働契約の解除をされるということです。解雇には次の3つの種類があります。

 

 普通解雇~雇用主と労働者の信頼関係が失われた、仕事を遂行する能力が著しく劣る、健康上の大きな問題があって業務に支障をきたす、などです。不当解雇の場合が多く、裁判でもほとんど認められません。

 

 整理解雇~事業の継続が困難である、人員整理しなければ倒産してしまう、などいわゆるリストラです。最高裁判所の判例などによる「解雇4要件」を満たしていなければなりません。しかし、辞めさせたい人物を整理部門に配置する、など不当解雇に利用されることも多々あります。

 

 懲戒解雇~就業規則への抵触や不祥事など、事業所に営業的・社会的な損害を与えたことに対して制裁として行う解雇です。労働基準法で定められた30日前の予告や解雇予告手当ての支払いはされません。ほとんどの場合、退職金も出ません。

 ただ、その根拠までが法律で決められているわけではなく、些細なミスを理由にされることがあります。退職金を支払いたくないため、あるいはリストラをスムーズにするために利用されることもあります。

簡単に承諾しないで

 

 「クビ」と言われたときに、退職勧奨だけでなく、たとえ懲戒解雇であっても、承諾したり判子を押したりしないでください。

 まずは、理由を確認してください。そして、即答せず、「少し考えさせてください」と持ち帰り、誰かに相談しましょう。もちろん私たち全国一般山梨へのご相談も歓迎します。

 そして、「来なくてもいい」と言われても、毎日出勤してください。

 

 心身を壊したことを理由にされても、その原因が仕事にあれば、簡単に解雇はできません。意図的・指名解雇ではなかったのか、客観的に証明されるのかどうか、十分に考えて、対処しましょう。

また、雇用保険も、自己都合退職、懲戒解雇ということになると、1カ月から3カ月の期間「給付制限」で支払われません。自己都合より会社都合のほうが給付金の総額も1.5~2倍になります。

納得できないのであれば、問題点を整理し、交渉しましょう。例え、会社側が承諾せず「自己都合」を訂正しなかったとしても、ハローワークで手続きをする際に、会社都合であることを訴えれば訂正がされる場合もあります。


 

日常的な対策をしよう

 

ほとんどの場合、相談者の側にも悪いところ、足りないことがあります。「なんでそんなことしちゃったの」とか「そのときに相談にきてくれれば、なんとかなったかも知れない」というケースが本当に多いのです。

労働組合があれば、組織的に対策を取ったり、労使でルールを作れるのですが、労組がなければそれもできません。ワンマン経営だと、「社長がルール」のようになってしまいがちです。

そこで、普段の対策が必要になってきます。まず、就業規則を確認しましょう。処分規定などを控えておきます。

採用通知あるいは雇用契約書、賃金明細などは必ず保管しておきましょう。使用者から出された文書やメールなども保管しておきます。

最近は「査定」を理由に解雇されることも多いので、それらの文書も必ず写しておきます。コピーが無理なら、接写のできるデジカメで写してもよいです。

それから、自分の行動を示すようなものです。できたら、ノートにコンビニやガソリンスタンドのレシートを貼って、何時に起きて家を出て何時に帰ってきて寝たのか、職場でなにがあったのかまとめておきましょう。古い預金通帳も取っておきましょう。

少しでも具合が悪かったらできるだけ病院にいきましょう。病院に行けなければ、市販薬を買い、レシートや容器を取っておきましょう。身近な人に具合を伝えておくのも良いことです。

朝礼の様子や社長の訓示などはICレコーダーなどで記録しましょう。上司などに個室に呼ばれた場合も必ず記録しておきましょう。

あと、できれば、賃金の口座振込はやめて、現金にしてもらいましょう。