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労働協約を取り組もう

 

 

1.職場には決まりごとがある

 

 労働者が職場で働くことについてはいくつかの決まりごとがあります。法律意外には大きく分けて労働契約・就業規則・労使協定・労働協約です。

 

1)労働契約

 労働契約とは、労働者が使用者に対して労務を提供することを約束し、これに対して使用者が賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約です(労働契約法第6条)。労働契約は、必ずしも書面で締結しなければならないわけではなく、双方が合意すれば口約束だけでも成立します。なお、一般には民法上の請負契約(第632条)や委任契約(第643条)は労働契約とは性格が異なりますが、これらの場合でも実質的な点から労働契約とみなされる場合もあります。

以下の場合には労働契約法の適用が除外されます。

* 国家公務員及び地方公務員(労働契約法第191項)

* 使用者が同居の親族のみを使用する場合(労働契約法第192項)

* 船員法の適用を受ける船員などは一部適用除外(労働契約法第181項)

 

2)就業規則

 

就業規則とは、使用者が制定する労働条件の明確化のため、就業時間・賃金・退職・職場規律等について労働基準法において定められた規則のことです。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、労働者の代表の意見を聴いて、労働基準監督署に届け出ることが、労働基準法により義務付けられています(第89条、第90条)。作成時だけでなく、変更した時も同様。作成は企業単位ではなく、事業所ごとに作成する必要があります。

 

3)労使協定

 

労働基準法では特定の労働条件の変更について、当局とその職場の過半数の労働者(臨時職員やパートタイマーなども含む)で組織された労働組合、過半数を組織する労働組合がない場合は、過半数を代表する者との間で労使協定を締結することを義務付けています。

いわゆる三六協定(時間外・休日労働に関する協定)や二四協定(賃金控除協定)、各種の変形労働時間制に関する協定、年次有給休暇の計画的付与に関する協定など、14種類の労使協定があります。これらはすべて、労働基準法に定められたものです。また、労使協定には、行政官庁への届出が必要なものと必要ないものがあります。

 

■ 労使協定が必要な場合【条文番号】届出必要の有無

1) 使用者による労働者の預金管理(強制預金) 182 必要

2) 購買代金などを賃金から一部控除して支払うとき 24 不要

3) 1カ月単位の変形労働時間制を採用するとき 322 必要

4) フレックスタイム制を採用するとき 323 不要

5) 1年単位の変形労働時間制を採用するとき 324 必要

6) 1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用するとき 325 必要

7) 休憩の一斉付与の原則の解除(交替制など) 342 不要

8) 時間外労働・休日労働について定めるとき 36 必要

9) 月60時間を超える時間外労働を対象とした代替休暇 373】不要

10) 事業外みなし労働時間制を採用するとき 3822 必要

11) 専門業務型裁量労働制を採用するとき 383 必要

12) 年次有給休暇の時間単位での取得【394】不要

13) 年次有給休暇の計画的付与を行なうとき 396 不要

14) 年次有給休暇取得日の賃金を健康保険

      の標準報酬日額で支払う場合【397】不要

 

労基法以外にも、育児・介護休業法や雇用保険法など、全体として労使協定に関する定めは二十数項目に及んでいます。

 

・育児休業制度の適用除外者(育児介護休業法第6条)

・介護休業制度の適用除外者(育児介護休業法第12条)

・看護休暇制度の適用除外者(育児介護休業法第16条の3

・安全衛生計画策定時の過半数労働組合の意見聴取(労働安全衛生法78条)

・企業型年金制度創設に関する規約作成にあたっての同意(確定拠出年金法3条)

・民事再生手続き決定にあたっての労働組合の意見聴取(民事再生法24条の2

・会社分割に伴い対象となる従業員の理解促進に向けた労働組合との協議

          (労働契約承継法施行規則4条)

・特定(産業別)最低賃金の適用に関する申請(最低賃金法15条)

65歳までの継続雇用制度(高年齢雇用安定法第9条の2) などなど

 

4)労働協約

 

労働協約とは、労働組合と使用者またはその団体と結ばれた労働条件などに関する取り決めのうち労働組合法(昭和2461日法律第174号)に則って締結されたもの。労働協約は労働組合と使用者側との契約であることから、原則として締結した労働組合に加入している組合員にのみ適用される。その締結にあたって、法の定める労使協定の要件を満たしていれば、その事業場の労働者全部に適用される。また、組合員がその事業場の4分の3以上を占める場合も同じ。

 

 

2.意外と知られていない労働協約の重み

 

 効力の優先順位は優位のものから順に、①労働基準法、②労働協約、③就業規則、④労働契約という順になります。労働協約は労働組合でなくては締結できませんので、特に労働組合にとって労働協約が非常に大きな役割を持つことになります。

 

(1)労働契約・就業規則・労働協約等の効力関係

 

①労働契約と法令

 労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。この場合において、無効となった部分は、労働基準法で定める基準によります。(労働基準法第13条)

 

②労働契約と就業規則

 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効となります。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準によります。(労働契約法第12条)

 

③労働契約と労働協約

 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効となります。この場合に無効となった部分は、その基準の定めるところによります。労働契約に定がない部分についても、同様です。(労働組合法第16条)

 

④就業規則と法令、労働協約

 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはなりません。(労働基準法第92条)就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第7条、第10条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用されません。(労働契約法第13条)

 

2)公営企業と労働協約の関係

 

自治体職員には労働協約の締結権が奪われているとされており、条例によって労働条件を規定することが原則になります。しかし、公営企業や独立行政法人の場合は、労働協約が優先されます。

「地方公営企業等の労働関係に関する法律」第8条および第9条では、条例(規則その他の規程)に抵触する労働協約が締結された場合、その締結後10日以内に、条例(規則その他の規程)の改正をしなければならないと定められています。さらに同第10条では、予算増を伴なう労働協約が締結された場合も同様の対応を課しています。

ところが、理事長、事務局長といった使用者側の人間の多くが自治体からの出向や再雇用であることから、無理解による労働協約の無効化がされるという違法行為が見受けられます。

 

3.団体交渉と労働協約

 

「団体交渉」(団交)というと、なにやら「争いごと」という印象もありますが、基本的には労使の話し合いの場です。団体交渉においては、形式的には労働協約の締結が目的になります。団体交渉の結果、労使間で合意した事項を書面にし、双方の代表が署名または記名押印したものを労働協約といいます(労働組合法第14条)。つまり、交渉の時点から労働協約の締結を念頭にすることが重要であり、労働協約の案を提示して交渉するのが基本になります。

 使用者は、労働組合の要求を受け入れることまでは義務づけられていませんが、正当な理由なく団体交渉を拒否することはできません(労働組合法第72号)。また、単に交渉に応じるだけでなく、要求を検討し、受け入れられなければその根拠を示すなど、誠実に対応しなければなりません。

 労働組合は、使用者との団体交渉を通じて労働条件の維持改善を図ります。合意に至らない場合には、どこの条文のどういった点がどのような理由で障害になっているのかを労使それぞれが明らかにすることで、次の交渉につなげます。

 

■労働協約の一般的拘束力

 一つの工場・事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が同じ労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されます。

 ただし、その工場・事業場に複数の労働組合が存在しているときには、たとえA組合の労働協約の適用を受ける労働者の数が4分の3を超えたとしても、他の組合の組合員に対してはその労働協約は適用されません。(労組法17条)

 

■労働協約の地域的の一般拘束力

 一つの地域において従事する同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、申し立てに基づき、労働委員会の決定により当該地域において従事する他の同種の労働者及び使用者にも拡張適用される場合がありますが、例は少なくなっています。(労組法18条)

 

■労働協約の有効期間

 労働協約の有効期間は、労使の話し合いによって自由に決められるものですが、期間を設定する場合には、3年を超える期間を定めることはできません(労組法15条1項)。

3年を超える有効期間を定めても、その労働協約の有効期間は3年としか認められません。有効期間を定めた場合には、期間満了をもって労働協約は終了します。

有効期間を設定しない場合には、労使のどちらか一方が文書で、少なくとも90日前に予告することで解約できます(労組法15条3項、4項)

 ただし、解約権濫用の行使に当たらないことが当然に求められますので、無制限に解約できるというものではありません。また、解約権を行使する前に、労使関係安定の見地から労使交渉による合意形成のための努力をすることが必要です。

 

4.労働協約を結ぶポイント

 では、実際にどのような事項について協定を結べばよいのでしょうか。ここでは具体的なポイントについて説明します。

 

(1)合意に達したものから一つずつ締結し、段階的に内容の充実をめざす

 

 労働協約には、賃金、労働時間、退職金など、個々の事項についてその都度締結する「個別協約」と、それらの事項を体系的に取りまとめて締結する「包括協約」があります。最近、民間大手労働組合を中心に「包括協約」を締結する風潮が強まっています。これは「ユニオンショップ協定」を結ぶなどして、上からかぶせるようなやり方で一気に締結を進めようというものです。

 包括協約では就業規則に対する関係性を明確化したり、関連項目に及ぶ包括的な団体交渉ができるなど利点も多くありますが、現場からの要求を集約する、その後の個別対応をやりやすくするといった点では個別協約が適しています。

特に労働協約のない組合や、組合結成直後などの場合、はじめは労働組合活動や団体交渉をスムーズに行うための最低限のルールだけでも協約として締結しておきましょう。そして、当面必要と思われる事項について合意に達した部分を個別的に締結し、積み重ねていきます。一度に理想的な条件にこだわるのでなく、現時点で可能なものから協約化し、少しずつ改善し充実させていきましょう。職場討議の中から、問題点を明らかにして、要求し合意、締結、職場に戻すといったサイクルを確立させましょう。

 

(2)労働組合と使用者の関係を定めよう

 

労働協約を性質で見ると、 時間内組合活動、施設利用、チェックオフ、専従などを定めた「組合活動に関する部分」と、ユニオンショップ、組合員の範囲、争議条項、平和条項、団交事項、労使協議事項などの「労働基本権に関する部分」、そして、人事条項、賃金、労働時間、休日、休暇、福利厚生など労働者の待遇についての基準を定めた具体的な「労働条件に関する部分」の3つに分けられます。

このうち「労働基本権に関する部分」については、「労使関係の基本事項に関する協約」などの名目で別途に作成し、すべての個別協約の上位に位置付けることが必要です。

「組合活動に関する部分」で、見落としがちなことに、組合と使用者側の費用負担に関する協約があります。事業所設備の使用や組合事務所の貸与に関する項目を定めたものです。注意するのは「何でもタダ」としないことです。常識的な範囲内で費用負担を定めましょう。「不当労働行為」(労働組合法 第7条 第3項)に該当しかねないからです。

 

(3)規定を明確にして労働協約の実効性を確保する

 

解釈をめぐってトラブルを起こさないよう、明確な用語を使いましょう。その職場や職種で使う専門用語などを使う場合などは、前文もしくは第1条で用語の説明をしておきます。

また、補足が必要な場合には、その都度「了解事項」等を入れたり、別に「覚え書き」「付属書」などをつくりましょう。

使用者は文面の解釈を求めて、弁護士に相談することが多々あります。そして、弁護士の指示で締結できない結論を出す例が多いのが現実です。そこで、交渉に当たっては、労使関係の現実を踏まえて「協議」や「同意」の文字を、例えば、「互いに充分な話し合いをもって理解にむけた努力を行う」、「互いの理解(納得)、承諾のもとに」などの言葉に置きかえることが必要なケースもあります。強い用語を使うことが強い協約になる、ということではありません。個々の具体的条項ごとに実質的な効力が担保できるようにしておくことが重要です。

名称については、「メモ」でも、なんでも良いとされていますが、混乱を招かないためにも「〇〇に関する労働協約」などのようにわかりやすいものにしましょう。

また、必ず、労使両当事者が署名または記名押印しなければなりません(労働組合法第14条)が、使用者側に決定権がなかったり、弱い場合は、親企業や元請けの決定権のある者(背景資本)も交えて締結しましょう。組合側も上部団体の代表者を入れることで実際の効力を高められる場合もあります。

 

(4)有効期間に注意

 

先に述べたように、労働協約については無期限で有効ということではありません。期間の定めがあるのに更新協定をしていないことで無効になったり、期間の定めがないものでは、いつ解約されるかわからない、といった状態になります。また、労使交渉がまとまらないなどの事情で有効期間満了によって労働協約が失効してしまうことも考えられます。

それらの対策として、よく行われるのが、労働協約に「自動延長条項」や「自動更新条項」を盛り込むことです。

 

①自動延長条項

労働協約は有効期間の定めをした場合、期間の満了によって失効しますが、新しい協約が結ばれるまでの間、無協約の状態にならないようその効力を存続させようというのが自動延長条項です。期間の定めのあるものとないものとがあります。

 

■期間の定めがある自動延長

その労働協約は、延長期間が満了すれば当然に失効します。なお、自動延長条項として期間の定めをしたときは、本来の期間と合わせて3年を超えることができません。

 

【規定例】有効期間満了後も、なお3カ月間有効とする

 

■期間の定めがない自動延長

労働協約の期間満了後も期限を定めないで再延長するというのが期間の定めのない自動延長協定です。この協定によって延長された労働協約は、延長期間に入った後は期間の定めがない労働協約と同様の取扱いを受け、したがってこれを解約するには当事者のいずれか一方が署名又は記名押印した文書で90日前に予告しなければなりません。

 

【規定例】有効期間満了後も、なお新協約成立の日まで有効とする

【規定例】期間満了により失効した場合、新たな労働協約が締結されるまでの間は、本労働協約に定める事項については、本協約の基準による。

 

②自動更新条項

労働協約の内容について、労使ともに改廃を希望しない場合、期間が満了した労働協約をそのまま再度新労働協約として発足させようというのが自動更新条項です。自動更新においては、労働協約の内容は以前と変わりませんが、形式上別の労働協約が新たに締結されたものとみなされます。この点が自動延長と異なります。

 

【規定例】有効期限満了30日前までに、労使いずれの一方からも改廃の申し入れがないときは、引き続き3年間更新するものとする。

 

5)期間は長ければ良いか

 

一般に労使関係は労働協約の有効期間が長ければ長いほど安定しますが、その反面、経済情勢や企業経営の変化、法制度の改訂などに対応しにくくなります。特に労働時間や賃金、人事にかかわるものなどは、その都度実情に応じて取り決めるのが望ましいものです。

ですから、基礎となる「組合活動に関する部分」や「労働基本権に関する部分」は長めの期間や自動更新、一方で「労働条件に関する部分」については、できるだけ短めの期間にしておいて、その都度交渉し協定するのが良いでしょう。

組合役員には面倒ですが、組合員の要求と討議を活発化させる、組合役員のノウハウを蓄積し継承する、といった大きな利点もあります。

 

6)体系で整理し管理する

 

個別協約を積み重ねた場合に、どの案件でどういう協約を結んでいるのか、失効していないか、無視されていないか、といった事が把握しきれなくなってしまうことがあります。そのため、個別協約を包括的に管理していくことが必要になります。

包括的に見るには、就業規則に当てはめてみることです。そうすると締結されていない事項が明らかになります。とりあえずは就業規則に書かれていることを、そのまま追認していく形で協定化していきます。

 それらを締結期間ごとにリスト化し、交渉時期を設定していきましょう。

 

(7)労働協約の点検活動と協約整備の取り組み

 

    労働協約は、締結しただけで効果を発揮するものではありません。立派な協約を

   持っていても組合員がそのことを知らずにいれば、労働協約に反する職場実態に陥

   りかねません。労働組合は、労働協約を周知徹底するとともに不断の職場点検活動

   に取り組む必要があります。また、そうした労働協約に照らした職場点検を通じて、

   次の協約整備の課題を浮上させ、協約のレベルアップへと結びつけていくことが重要

   です。