労働組合の取り組み

1.要求しよう

 

全国一般労働組合は、春闘において毎年「統一要求」を決めて、全国一斉に要求行動を取り組んでいます。

いつ倒産するかわからないなど、経営の厳しさから「とても要求などできない」という組合も多くあります。それぞれの職場では「ムリな要求」かも知れませんが、産業や企業規模ごとの賃金水準の相場をつくることが春闘の意義の一つです。中小は大企業に比べて賃金が低いので、要求をすることで低賃金の改善を社会的に訴える必要もあります。それは、未組織の労働者にも影響を与えます。

 

2.生活できる賃金を

 

いくら、経営の危機だからといって、生活のできないような賃金では働き続けることはできません。また、必ず「このくらいの賃金でないと割りに合わない」という水準があります。生活のために組合員が借金をしなければならなくなったり、仕事へのやる気がなくなるような賃金は許してはいけません。「景気のため」ではなく、私たちの「生活のため」に堂々と賃金を要求しましょう。

 

3.賃金制度の整備を

 

中小零細の職場では、賃金制度が不備なところも多くあります。勤務年数や資格による昇給制度の整備をめざしましょう。使用者の勝手な昇給や降格を許さず、客観的で公平な賃金制度を整備するのも労働組合の大きな役割です。

また、どんなに少額であっても評価制度などによる成果給・能力給制度は労働者の団結を破壊します。わかりにくいですが、皆勤手当や提案に対する報奨金、使用者経費による懇親会や旅行なども同じです。職場に仲間同士のいがみあいなどを招きます。安易な導入には反対しましょう。

 

4.行き過ぎた合理化を許さない

 

経営が厳しくなればなるほど、労働者は「働かせていただいている」「賃金をもらえるだけありがたい」「要求なんてとんでもない」といった気分になりがちです。しかし、それでは、労使共倒れになりかねません。経営難の場合、人員や人件費削減などのコスト削減合理化ばかりになってしまい、行き過ぎて業務に差しさわりが起きることもあります。そういうときにこそ、組合で現場からの改善を示すなど、使用者と話し合うことが必要です。

 

5.基本賃金以外の要求もしよう

 

基本賃金の要求だけでは行き詰まります。基本賃金の要求ができないからといってあきらめてはいけません。労働時間の短縮は残業単価のアップにもなります。着替えの時間や待機時間を労働時間に組み入れたり、時間外の自主研修・小集団活動を残業処理させるなどをしましょう。また、労働安全衛生の点検をして、職場環境の安全を確保したり、作業の改善などで労働の軽減をしましょう。

 

6.小さな労働条件の変更を見逃さない

 

会社側から労働条件の一方的な変更がされることがたびたびあります。そういったことを、「別にたいしたことではないから」と見過ごしてしまうと、あとで大きな問題に発展することがよくあります。

例えば、「休憩室の自動販売機の廃止や設置場所の変更」「顔写真入りのネームプレート」「電話に出る際に担当者の氏名を言わせる」「役職ポストの増加」などです。

このような労働条件の変更は、直接的な「賃下げ」や「解雇」ではないために、何の警戒もなく受け入れてしまいがちです。しかし、大きな労働条件変更の下地作りなのです。できるだけ、そのたびごとに組合で相談してください。

また、すでに実施されているような場合には、少しでも押し戻すように交渉をしていきましょう。そういった小さな取り組みの積み重ねが、使用者側と労働組合との力関係を変えていきます。

 

7.実態調査、集約、交渉、妥結、宣伝のサイクル確立を

 

職場の実態を調べて、組合員の声を集め、交渉して妥結、それを宣伝して組合員に返すことが労働組合の柱です。職場に対等な労使関係を築き上げ、民主的な風土を作ることになります。仕事に対するモチベーションを上げることにもつながります。それにより、労働組合の活動が組合員の身近なものとなります。職場のことを見て見ぬふり、ではいくら賃上げ要求をしても遠い存在になってしまいます。組合ニュースの発行や掲示板の設置などはもちろんですが、休憩時間などに組合員同士で声をかけ合う、あいさつをする、といったことを心がけましょう。

 

8.労働協約を締結しよう

 

 交渉している組合でも、労働協約の締結をしていないことがあります。団体交渉で妥結した事項について、労使で署名捺印をしましょう。組合の権利強化だけでなく、誤解などのトラブルを防ぐためにも必要です。最低でも文書での確認をするようにしましょう。

 

9.行動の定例化をしよう

 

「組合員の声を集める」といっても、なかなか難しいものです。また、使用者側にも予算や決算、採用などの都合があります。そこで、年間の行動計画を立てて、定例化して取り組むことが必要になります。

代表的な例として次のようなものが考えられます。

 

4~5月・・・・・新採用従業員への組合説明会・加入

6~7月・・・・・夏期一時金(ボーナス)交渉

8~9月・・・・・来年度の採用、人事配置要求

10~11月・・・職場環境改善要求

11~12月・・・冬期一時金(ボーナス)交渉

12~1月・・・・賃金実態調査

2~3月・・・・・春闘(賃上げ要求)

 

具体的には、その事業所の状況に応じて決める必要があります。一時金(ボーナス)については、春闘期に決めてしまい、特に想定外の業績悪化などなければ、そのまま支払うという事業所もあります。

これらの行動をこなしていくためには、執行委員会(役員会、幹事会)の定例化や、組合の規模によっては職場委員会や闘争委員会の開催が必要になります。